2012年6月19日 | category: 卒業生
銀座リコーギャラリーで写真展を開催中の田山湖雪さんにインタビューさせていただきました。
RICOHが企画する、12人の写真家を繋いでいく『GRバトン 写真家リレー』
第4走者・田山湖雪「suraito’」
会期 : 2012年5月16日~2012年5月28日
http://www.ricoh.co.jp/dc/ringcube/
田山湖雪(たやまこゆき)
1987年生まれ。静岡県藤枝市出身
2011年、東京造形大学デザイン学科写真専攻 卒業
三重のローカル季刊誌『NAGI』の編集部に勤務
三重県伊勢市在住
伊勢市二見町を発信するwebサイト『カエル堂』にて写真を担当。
http://www.tayamakoyuki.com/
―写真展おめでとうございます。今回の展示は12人の写真家がリレー形式で行う写真展ということですね。
はい、月に一度の交替を12人で一年かけて行う企画です。若手の写真家を数珠つなぎに、テレフォンショッキングみたいに次の方へ繋げていくので、最終的には企画者も「どうなるんだろう?」と言っていました。私にバトンがまわってきたのは、去年個展をしたときに知り合った『TOTEM POLE PHOTO GALLERY』のメンバーの方からでした。
―今回の作品のコンセプトを簡単に教えてもらえますか?
タイトルが『suraito’(スライトダッシュ)』となっていますが、suraitoというのは造語で、slice of light―光を薄く切っていく作業という意味で、このようなタイトルを付けました。造語にしたのは、文字情報などモノの持つ意味合いが強くなるので、それを削ぎ落としていきたいということです。
―撮影した場所は?
三重県の伊勢近辺ですね。三重に住みはじめて今年で2年目になります。
―写真の風景はどんな感じでみつけているんですか?
仕事などで色々なところに行くので、それが下見みたいになっていて、後で気になった場所を狙って撮りに行ったりしています。『suraito’』に相応しい風景を探すというよりも撮ってて出てくる感じです。そういう光景に出会えそうだなぁというのはその場所の「におい」というか、特徴みたいなのがあるので、その場所でにおいをかぎながら探していく感じですね。
―今回の写真は(リコー)GRで撮ることが企画全体の約束ですが、これまではモノクロフィルムで撮っていて、デジタルでカラーというのは今まであまりやってこなかった分野ですよね。違うことをやってみたときの印象はどうでしたか?
普段の仕事では、ほぼデジタルを使っているので、デジタルを使うことが初めてではないんですけど、デジタルだと「撮れちゃう」から、逆に撮ってて自分が追ってるモノが逃げちゃうような感じがして、やっていくうちに分かんなくなってくる気がしますね。
造形大でデジタルを習ったんですが全然使ってなかったから、初めは画像の大きさの設定からわからずに、ケータイくらいのサイズで撮ってしまったりしてました。後でデータを見たときに小っちゃくてどうしようって(笑)。実践で使ってくことでデジタルの勉強になりましたし、モノクロとは感覚のズレがあって自分にはフィルムのほうがいいかなと、改めて感じられたのでよかったなと思います。
―モノクロフィルムは自分で現像しているんですか?
風呂場で現像しています(笑)。引き延ばし機を買ったので、今年からちゃんとプリントしていこうかなと思ってます。
―『カエル堂』というウェブサイトがありますが、あそこに載せている写真はフィルムで撮ってるんですか?
はい、そうです。カエル堂は、私が写真を撮って、デザイナーとライターとウェブ担当の4人で作っているサイトです。二見町の夫婦岩という観光地があって、昔は栄えていたんですが旅館街が衰退していって町に元気がないということで、応援の気持ちで始めました。今は写真を暦でアップしていくみたいなスタンスでやっていて、あとはデザイナーがカレンダーやグッズを作って、二見町の新しい魅力やポイントを作っていこうとしています。まだ始めたばかりですし、月に2度くらいのアップなので、ゆる~くやっている感じです。
『カエル堂』 http://www.23kaeru.jp/
―田山さんはいま、NAGIという三重県の雑誌の編集をやっていますが、田山さんの出身が静岡で、造形大を出たあとそのまま三重に行ったということは、まったく知らない土地で仕事を始めたわけですか?
大学の中里和人先生に相談したところ「こういう雑誌(NAGI)があるよ」と紹介されたのが、三重との縁で、それまでは何もなかったですね。ちょうど募集をしてたので良かったです。まったく三重を知らない人を採用するというのは、三重の魅力を伝えているNAGI編集部としても、初めての試みなんじゃないかなと思います。
ふるさとを刺激する大人のローカル誌『NAGI』http://www.i-nagi.com/
―三重の印象はどうですか?
温暖なところなので、人の温かさや緩さというのがおもしろいですね。東京にはない部分だなあと思って。関西の文化が入っていたり名古屋や三河の方の文化も入ったりしていて、独特なおもしろい場所です。
―若干(田山さんも)関西弁になってる?
そうですね(笑)。仕事してて、うつってきます。
―例えば、三重にずっと住んでいる人たちには慣れすぎて見えない部分を、外からの目線で指摘できるということもあるんじゃないですか?
そうですね。視点のズレがあるというのを発信する役目なんだろうなと思います。いま出稿が終わったところですが、次に出る号からの新しい連載企画で、「三重の不思議な光景」みたいなページを任されていて、三重県の人と他県の人との差を写真で提示していくという連載です。そういう役割をもらえて、嬉しいです。
―今回の展示の他に自分の中のテーマや、続けている作品はあるんですか?
スナップはずっと撮っています。あとはマミヤ7を買って35ミリから中判にいきたいなと思っていて、ちゃんとモノと向き合おうかなと思ってます。でもスタンスは大学の時と変わらず、気になったら撮ってる感じです。
―何かのプロフィールに写真家の鈴木清さんが好きだと書いてあったんですが、写真を使って編集するとか、本を作るということに、興味がある?
はい、製本をするのが好きなので、鈴木さんの編集の能力というかチカラはすごいなと思います。一枚の写真よりも、本という媒体のほうが自分に合ってると思っているし、それで頑張っていきたいなというのがありますね。やっぱり自分の本を作りたくて、将来的には写真集を出したいので、この(本にする)作業はずっと続けていきたいです。
―最後に東京造形大卒業生として、在校生たちにメッセージをお願いします。
卒業してから「もっとちゃんと学んでおけば良かったな」って思って。大学を出てからわかってくることも多いから何とも言えないんですが、自分のやりたいことや「こうしていきたい」っていうビジョンを持ってやっていけば、後から作品や写真などの結果が伴ってくるので、そういう先を見据えた事を考えて欲しいなって思います。ありがとうございました。
インタビューを終えて
インタビュー後、写真集『あんどろまらけの歌』を見せていただきました。
田山さんは、明るく丁寧な印象で、先輩方や知り合いの方々にも丁寧に対応していました。現場での活躍の様子が私達には参考になりました。これからも、活躍期待しています。
ありがとうございました。
取材日:2012年5月20日
インタビュー:首藤幹夫
写真:松田真生
文:廣瀬直彦/石井剛樹