榎本祐典さんインタビュー

2013年12月11日 | category: 卒業生


写真専攻卒業生、榎本祐典さんの写真展『hyperyhermy』(コニカミノルタプラザ・ギャラリーB・2013年11月16日〜26日)会場でお話をうかがいました。

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◉プロフィール
榎本祐典 Enomoto Yusuke
1986年、東京生まれ。2010年、東京造形大学卒業。以後、写真制作を継続
写真展
『Sorry,I am a stranger here.』2010年
『hyperyhermy』2013年
ウェブサイト『eno photo blog』
http://enophotoblog.blogspot.jp

Q:この写真展はいつごろ撮影された写真でしょうか。
2年ほど前に1人でインドに1ヵ月間行ったときの写真と、今年の3月にタイに3週間行ったときの写真がおもです。以前、ベトナム・マレーシアに2週間ほど行ったときのものもアジアというくくりで入れています。デジタルカメラで撮って、出力はインクジェットプリンターです。これまでずっとモノクロフィルムで撮ってきたので展示はモノクロにしました。
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photo: Enomoto Yusuke

Q:タイトルの意味は?
タイトル「hyperthermy」の意味は直訳すると高熱や異常に高い体温という意味になります。アジアの街に漂う熱気や、それを見た時の自分自身の高揚感を表現したいと思いこのタイトルにしました。また「ハイパー」という語感が、今回の写真のテンションに合っているかなと自分では思っています。

Q:アジアを撮ろうと思った最初のきっかけは?
インドは最初、ただ行きたくて行ったところが大きかったんですが、帰国して撮ってきた1万枚くらいの写真に対峙したとき、自分で面白いと思えた写真が10枚くらいはあったので、単純に作品にできるかなと感じました。でも、インドの写真っていうのは世の中にたくさんあるので、そういうところでは勝負したくないと思っていて、今年、こんどは作品を作る意識でタイに行って3週間撮影したものを合わせて作品にしました。でもここを撮ろうと決めて行ったわけではないので、まずはバンコクから入るというごく普通の感じで、向こうではガイドブックに載っているような有名な観光地とかにも行きました。
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photo: Enomoto Yusuke

Q:日本で撮っていることとアジアのほかの国で撮っていることの違い、どうしても目がいってしまう風景、状況などはありますか?
目の行くところは日本で撮っていてもどこでも自分のクセというのがあると思うので、言葉にしてとくにインドのどこ、タイのどこという意識はないです。単純に珍しいもの、発展途上のごたごたした街とか、そいういうところに魅力を感じましたね。
ただ1ヶ月滞在したインドは途中から撮る量が減ってきて、でも、減ってきたなかで撮った写真のほうが今回選んだ枚数が多いんです。最初の視点から変わってくるんですかね。それから、受け身というか、今回アジアに行ったときに撮らされている感じがしました。ストレートにというか、自分が撮りたい世界観のようなものを押しつけずに撮れたという感じがしました。
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photo: Enomoto Yusuke

Q:写真を撮っていると現地の人に「見せて!」って言われないですか?
言われますね。「撮ってくれ!」って来た人には見せたり、よくしてくれた人に送ったりもしました。インドではとくに、カメラを持っていると「撮ってくれ」とよく言われるので、人は撮りやすかったですね。展示していないですが、ポートレートとか人の写真はたくさん撮りました。気に入ってる写真もあるんですけど、そういう笑顔の写真は違うかなと思って今回ははずしました。
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[写真キャプション]キャメルサファリ(ラクダに乗って一泊二日砂漠を周遊するツアー)。寝泊まり時は砂漠のど真ん中でボロ布をカブるだけ。耳と鼻に入った砂が一週間取れなかったが良い思い出だ。インド、ジャイサイメールにて。

Q:在学中のことを少し教えてください。
造形大に入る前は予備校でグラフィックデザインの勉強していたこともあって、写真にほんとうに興味をもてたのは2年生の後半くらいからでした。3年生になって、毎月1冊写真集を作るという、柳本尚規先生のドキュメンタリーフォトの授業がありました。同期の池上くんや旭くんと張り合うように作っていたら写真が面白いなって思うようになりましたね。モノクロフィルムの写真は造形大で始めました。それが続いていて、国内で撮影する時は今でもフィルムで撮っています。
ゼミは高梨豊先生でした。毎週写真を持っていかないと授業にならないのでプレッシャーがありましたし、最初は何を言われるのかな? ってものすごく緊張しましたね。なんとか授業に写真は持ってはいきましたけど、つねに良いクオリティーのものを出すのは難しかったです。でもすごく親身になってくださって、方向性の近い作家さんの本を貸してくださったり、在学中から展示の際は必ず見に来てくださっています。高梨先生から言葉が大切だって教わっていたんですけど、この展示の際、言葉って、タイトルって大事なんだなって痛感しました。とくにスナップ写真を並べたときに見る人がどう見るのか? 手助けになるのはタイトルかな? と、あらためて思いました。

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Q:今後の予定は?
今回の反動じゃないですけど、日本の写真を撮りたいですね。卒業制作も日本の写真でしたし、その流れで続けているものもあります。写真としてはスナップですが、裏付けというか何を撮っているのかを明確にした写真に挑戦したいと、今回展示して思いました。自分のなかで気に入った写真を出すということばかりを続けてきちゃったので、コンセプトというか、ちゃんと考えたいなと思いました。

インタビューを終えて
榎本さんの写真からはアジアの熱気が確かに伝わってきますが、まなざしはとても静かです。その絶妙な距離感に好感を持ちました。

インタビュー・写真:首藤幹夫