授業レポート「写真基礎」

2013年3月4日 | category: Basic Class


写真専攻1年生の必修科目の1つに『写真基礎』という授業があります。
暗室実習をメインに、写真を撮るための基礎知識や技術を学ぶ大切な授業です。
自分たちの撮った写真を目に見える形にする楽しい時間でもあります。

白衣を着て作業をするんですよ!
暗室に入りはじめてすぐの頃は、白衣に着られているような感じでしたが、後期を終えた今となっては白衣にもヴィンテージ感のようなものが出てきました!(笑)

現像液が付いたまま時間が経つと、変色(褪色?)してしまうんですよね。
私の白衣とか袖口がコーヒーをこぼしたみたいな色をしていますし。
ですがやはり、根っこのところはあまり変わらず、白衣を着ると気が引き締まるような気がします。
いつまでもこうした初心の気持ちは忘れないでいたいです!

暗室に入ったら、まずフィルムをステンレスリールに巻きます。
けれど一番最初の、この作業が意外と難しいんです。
現像作業で一番の難所だと個人的には考えています。
作業をする暗室は読んで字のごとく暗い部屋なわけですが、本当に、びっくりするくらい真っ暗です。
そして、いつもならなんてことない動作が、とにかくやり辛いです…。
そんな感じで、完全に視界を遮断された状態で作業をするのですが、フィルムがズレたときの「カシャッ」という音には何回も泣かされました。練習あるのみ、ですね。
無事に巻けたら下準備完了です!これ以降は暗いところから出て作業が出来ます。

この下準備を終えたあとで、現像→停止→定着の3つの工程、そして水洗・乾燥を終えると、ネガが完成します。

でも正直、自分が撮った写真がネガになって出てくる瞬間は未だに不思議な気持ちになりますね〜。
「いいのが撮れた!」という達成感や満足感、「もっと撮れたな〜」という反省点の他に、なんというか、自分の思考や感情をダイレクトに客観的に見せられる、独特な感じというか。
例えるなら、自分の証明写真を確認した時の「自分ってこんな顔してるのか〜…」みたいな、気恥かしさと不思議な感覚のようなものが根底にある気がしてなりません。気のせいなのかもしれませんが…。

こうして出来たネガやプリントを使って、いろんな作品を作っていきます。

デジカメやスマホではシャッターを切って一瞬の作業が、フィルムだとこうした工程で作業をしないと形に残りません。

しかし作業時間の長さは、写真自身・自分自身との対話の長さとも言えるでしょう。
それがフィルムの魅力であり、醍醐味です。
時間や液体を扱う緊張感、像が浮かび上がってきたときのわくわく感、全部全部フィルムじゃないと体感できません。

私たちのような、いわゆるデジタル世代はフィルム自体になじんでない人がほとんどだと思います。
写真を撮るのはデジカメで、撮ったらすぐにディスプレイで確認できて、失敗したらすぐ消去できます。
写真はプリンターで印刷されるのが”当たり前”です。
現に私も、この授業で写真を学ぶ前は、フィルムは写真屋さんで現像してもらうものだと思っていましたし、薬品と機材を使えば自分で現像できると知ったときは本当にびっくりしたのを覚えています。
それに、現像作業の楽しさを知ってしまった今、デジタルでパッと終わらせてしまうのは確かに楽だけど、この素敵な体験を味あわないのは、なんだかとってももったいない気がするのです。

何より赤いセーフティランプの下で「こうしたら面白いんじゃないか」とか、「次はこうしてみよう」とか考えながらの作業はとても楽しいですよ!

今回のレポートは以上です。
暗室の魅力はまだまだこんなものではないのですが(笑)、文章で表現するのはやはり難しいですね。
来年度もこうした体験を重ねて、もっと写真に向き合えたらなと思います。

文:外丸結貴
写真:三橋麻耶