Unpaired electron

2022年6月10日 | category: Advanced Class


-Unpaired electron-

この展覧会は、写真専攻領域3・4年生の研究指標科目「写真演習AⅠ(表現研究)」の課題発表展です。私が履修生に与えた研究課題は「二人一組になって互いの作品をキュレーションすること」。その際のポイントは「相方を著名な写真作家とみなし、魅力的に見える展示構成にすること」というものでした。

まずは組み合わせですが、履修生から組みたい相手の希望が出なかったので、全員くじ引きで決めました。その結果、学年を跨いだ組み合わせや3年次編入生との組み合わせなど、全体の2/3がほとんど知らない人同士の組み合わせとなりました。

 次に自分がこれまで制作してきた作品をできるだけ多く相方に預けるという作業をしました。その際、自分の制作意図が正しく伝わるのか不安視する学生もいましたが、この課題の最大の眼目は「受け手としての表現力」を養うことです。自分の思いを主張したくなるのをこらえ、受け手の声に耳を傾けてもらいました。しかしそれは見方を変えれば、自分の作品が他者にとってどのように見えているのかを知る数少ない機会でもあるはずです。喩えるなら、俳優が自分の後ろ姿を知る機会とも言えるでしょう。自分の作品に対して適正な距離を取って眺める、その感覚を相方の眼を通してつかんでもらうことも狙いの一つでした。

一方、作品を預けられた人、つまり“受け手”は相方の作品を研究分析してその優れた点を見つけ出し、それをZOKEIギャラリーという空間においてどう発信するのかを実践的に研究しました。どの作品を選び、それをどのように展示構成するのか、作品のサイズも含めて決断する作業です。他者の作品に対して漠然とした感想を抱くことはあっても、それを明確に見定め(分析)、展示方法を考え(決断)、ある種の責任を持って目に見える形に表す(実行)機会はあまり多くはありません。この「分析、決断、実行」という一連の流れは行動の基本型であり、今後の制作のみならず、人生の様々な局面で生かされることを期待しています。

さて、キュレーターとして相方の魅力をどれだけ表現することができたのか? 
この研究課題は自分の行為を客観物として提示したときが始まりでもあります。
来場者の皆様の忌憚のないご意見をお待ちしています。

担当教員・鷹野 隆大(たかの りゅうだい)