「衣食住」展示レポート

2013年2月4日 | category: Creative Photography


2013年1月10日〜13日に開催された、クリエイティブフォトグラフィ展『衣食住』についてのレポートです。

主に3年生が履修しているクリエイティブフォトグラフィの授業(担当教授:中里和人)では、〈衣食住の日常と非日常を撮る〉をテーマに写真制作を進め、クリエイティブな写真表現の新たな可能性を目指してきました。

この展示は、この授業の最終目標である「学外での展示」です。授業で扱ってきた「衣、食、住」の中から各自が最終的に展示したいテーマを選び、制作しました。

以下、それぞれのテーマから、代表学生のコメントです。

◉ テーマ「衣」
『Gnossiennes』吉橋悠生

私は、「衣」のテーマで、友人の服装を撮影しました。彼の服装は現代の流行におさまらない強い個性もっています。また、その個性的な服を平然と着こなしてしまう彼自身の存在感やキャラクターも魅力的でした。

そのファッションはギリギリのところで成り立つ独特の格好よさがあり、彼の存在感を一層際立たせているようにみえます。友人の持つ存在感を大切にしながら、正面からストレートに撮影しました。

◉ テーマ「食」
『ゼリーワールド』廣瀬直彦

今回の作品は、昨年のCS祭で展示した「ゼリーワールド」の続編です。

私は今、「水」をテーマにしています。「ゼリーワールド」は、もともと「ゼリーという水分を含んだ透き通るものを様々な表現で撮影してみよう」というコンセプトで撮り始めた作品です。

前回の「ゼリーワールド」では、私自身がゼリーを自作して、色や器を決めて撮影しました。結果、多くの「色」や「形」のゼリーが撮影でき、それを混ぜ合わせることで独特の世界観の道標になりました。しかし、反面「色」や「形」に意識が行き過ぎて、「ゼリー」の写真になっていたと思います。つまり、ゼリーという一般的なイメージに左右され、目指していた「水分」を含む物質が持つ、新たな「水」の表現からは少し離れてしまったと思いました。

今回は、自作したゼリーではなく市販された普通のゼリーを使用し、ゼリーだけでどこまで「粘質」「光」「屈折」といった「水」が持つ特徴を表現出来るかを目指しました。

マクロレンズを使い「形」や「色」に押されない写真を出来るだけ多く使って、「光」に目がいくように構成しました。また、やや抽象度が高い写真は構成により水の持つ特徴である「流れ」を感じるように写真を並べました。形や色の下列の部分から段々に光に注目していくようなイメージで全体的に表現しました。

「色」や「形」だけでなく、「水」を通して見る「光」の曲がり方や、「粘質」を感じていただければ幸いです。

◉ テーマ「住」
『日々の些事』佐藤千紘

今回「住」という課題で、19名の友人達に協力してもらい、部屋の撮影をしました。テーマの中心は「窓」と「人」、窓とそこに住む人の関係性を写しました。

「住」とは「人」が「主(あるじ)」と書きます。なので、人物も写しました。「些事」というのは、些細なことという意味です。「人生の些事」、人生の内の些細な事という意味で使われますが、私は窓と人、その人を取り囲む些細なことを表現したいと思い、このタイトルにしました。

全体のイメージとしては3階建て、1階に7部屋といったアパートをイメージしています。

『ドアの目』石井剛樹

ドアの窓は住空間の存在を窺わせると同時に、外の街並みも映し出す。この窓が二つの空間を見つめる「目」のように見え、するとドアは二つの空間を取り持つ「顔」であるように感じられた。

作品として仕上げた写真は、夜が深まり街の明かりが減る頃のものである。一足先に眠りについた建物のドアは、一時繋げていた空間を再び固く閉ざすという別の役割も見せてくれた。中の住空間を守りながら街を見つめる表情や意思のようなものを伝える作品を目指したのが今回展示した「ドアの目」である。

会期中、写真展会場では中里先生による講評も行われました。



展覧会を見に来てくださったみなさま、ありがとうございました。

構成:廣瀬直彦 写真:伊藤芙実

関連リンク:クリエイティブフォトグラフィ展「衣食住」