2020年度新入学生のみなさんへ

2020年4月3日 | category: information


東京造形大学写真専攻領域 2020年度新入学生のみなさんへ

新しい春を迎えられ、 東京造形大学写真専攻領域へのご入学おめでとうございます。
これから大学での制作研究へ期待を持って入学されたみなさんへ、できる限りの希望にお応えできるよう、写真専攻一同こころより、これからの学びを歓迎しております。

本来ならば、4月3日は入学式の予定でしたが、あいにく新型肺炎が流行したことで中止となり、授業開始が遅れてしまうことは大変残念に思っております。くれぐれも、密集した場所への移動を避けられ、手洗いを励行されることで、少しでもご自身の身を守られることを願っております。

今年度は予期せぬ授業前の長い待機休みができてしまいました。
写真を撮る機会もままならない状況ではありますが、暗いニュースばかり見ていますと、本来みなさんが表現をする、作品を作るといったクリエイティブなモチベーションがしぼんでしまいがちです。
そこで光明の差す方向でのお便りを送りたいと思います。

このような状況では限られた撮影になるかと思いますが、部屋の中を撮る、自分の持ち物を撮る、セルフポートレートを撮る、窓からの光景を撮る、空を撮る、自宅やアパート周りを散歩して撮る、植物を撮る、雑誌などを複写する、ネットやテレビの画像を複写する、オブジェクトを制作して撮るなど、撮影の工夫次第で、これまで目を向けることが少なかった身近な世界を観察するチャンスになるかもしれません。

ヨゼフ・スデク(Josef Sudek 1896~1976)というチェコの写真家がいます。二度の世界大戦を経験し、第二次世界大戦の時にはナチスの弾圧下で自由な撮影ができず、アトリエに閉じこもりながら、そこの窓を見つめる詩的な作品「スタジオの窓辺より」を制作しています。不自由な状況をリフレクションさせ、景観と自分自身の存在と不在感をテーマにした素晴らしく深遠な写真を残しました。

みなさんも、通常予定していた自由な撮影は影響が出ていると思いますが、考え方を転換させていけば、世界は広く深く連鎖していくものです。

また、写真を制作し研究するには、写真以外のことにも興味や関心を持っていくことも重要です。
近いメディアでは、映画や映像、絵画、漫画やアニメなどがあります。身近には小説、音楽もあふれています。その他にもアカデミックな歴史学、民俗学、天文学、心理学、社会学、哲学など、世の中にはたくさんの写真のヒントになる学問や科学があります。

日頃気になっていた世界を探検してみるチャンスとして、何かをひも解いてみて下さい。必ずこれから学ぶ4年間のどこかで、あるいは卒業後のどこかであなたにとって大事なヒントになることと思います。

現代美術ではそれぞれの専門性を基にして、総合的にメディアを駆使したメディア横断性の表現が世界標準です。また、どこの分野においても、これからの世界は、専門性をきちんと持ちつつも、マルチスペシャリストが求められていく時代でもあります。

各自のスキル、リテラシー、表現力、社会性を高めて自由な制作研究のできるのが大学という場所です。あなた方の制作研究をサポートする様々な設備、たくさんの個性的な教員、そしていくつもの授業が待っております。
我々もあなたがたとの学びを、とても楽しみにしております。

この休暇期間を利用して、脳をストレッチさせながら、新たに始まる写真研究の準備期間として下さい。

2020年4月3日
写真専攻専任教員 首藤幹夫 中里和人


追伸
今後の大学の対応については、東京造形大学ウェブサイトを参照してください。

また、機材の準備など、入学前の不安を抱えている方もいらっしゃると思います。
写真専攻に関して質問がある場合は、写真専攻のお問い合わせページから、名前とメールアドレスを書いて、ご連絡ください。
よろしくお願いします。